糖尿病と歯周病の関連性についてご存知ですか?
歯周病は細菌感染による慢性の炎症です。
進行すれば膿が出たり歯がグラグラして抜けてしまうことは良く知られていますが最近の研究によりさまざまな生活習慣病と関係があることがわかってきております。
その1つが糖尿病です。
あまり知られてはいませんが実は歯周病は糖尿病の合併症の1つといわれるほど深い関連性があります。
歯周病の原因は歯垢と歯石
歯周病は、歯茎が歯周病菌に感染することによって発症する病気です。お口の中が清潔であれば、歯周病菌が定着できないため、歯周病にかかることもありません。そこで注意したいのが歯垢や歯石の堆積です。これらは歯周病菌の温床となることから、お口の中が不潔になると歯周病のリスクも上昇します。1日1回はプラークフリーとなる状態を作り上げましょう。
歯周病で顎の骨が破壊される
歯周病は、歯肉炎(しにくえん)と歯周炎(ししゅうえん)の2種類に大きく分けることができます。歯肉炎は細菌感染が歯茎だけにとどまっている状態で、比較的軽度です。歯周病炎は、顎の骨にまで感染が広がり、治療をせずに放置すると顎骨が溶けていきます。重症化した歯周病で歯がグラグラするのはそのためです。歯が動揺するほど進行した歯周病では、抜歯を余儀なくされます。
歯周病治療ってどんな治療?
歯周病治療は、歯周基本治療と歯周外科治療の2つに分けられます。
歯周基本治療は
歯周病は口の中全体の歯で同時に進行していくため、全ての歯で歯周ポケットの深さを計測するポケット検査や、プラークの付き具合の検査を行います。
治療ではまずブラッシング指導により患者さん自身でプラークを取り除けるような練習を行います。プラークを形成する細菌が歯肉で引き起こしている炎症を減らすのが目的で、これは「プラークコントロール」と呼ばれ、歯周病治療の中心となります。
患者さん自身によるプラークコントロールが基本となりますが、その上で歯科医院で定期的に受診を行い、歯周ポケットの中に付着しているプラークや歯石を超音波振動機器や手用器具を用いて取り除きます。これは「スケーリング」といい、歯科医療従事者が行う重要なプラークコントロールです。
歯周基本治療で症状の改善が見られなかった場合は、歯周外科治療へ移行します。歯茎を切開して、歯根面の歯石を除去するフラップ手術、破壊された歯茎や歯槽骨を再生させる歯周組織再生療法などが該当します。
一旦治療が終了しても、歯周病は再発することが多いため、「メインテナンス」もしくは「サポーティブセラピー」と呼ばれる定期的なチェックとケアを行っていくことが必要です。
歯周病があると、どうして血糖値が高くなるの?
なぜ、歯肉の炎症である歯周病が糖尿病に関わってくるのでしょうか。出血や膿を出しているような歯周ポケットからは、炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に放出されています。
中等度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケット表面積の合計は掌(てのひら)と同じ程度と考えられています。歯周ポケットの中身は外からはなかなか見えませんが、手のひらサイズの出血や膿が治療なしで放置されていると考えると、からだ全体からも無視できない問題であることが理解できると思います。
ポケットから出て血流にのった炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします(インスリン抵抗性)。そのため、糖尿病が発症・進行しやすくなります。
歯周病治療で血糖値が下がる!
最近では歯周病と糖尿病は密接に関連していると言われており、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も数多く報告されています。
かかりつけ歯科医院を作りましょう
歯を失わないということは、生活の質を直接低下させないだけでなく、生活習慣病や認知症などの予防や管理にも深く影響してきていることが明らかになってきています。歯周病コントロールのためには、歯科医院での予防的なケアや専門的なアドバイスを受けるのが有効です。定期的なブラッシング指導を受け、自己流の間違ったブラッシングを続けないことにもつながります。かかりつけの歯科医院をつくり、年に1、2回のチェックとクリーニングを行うことが、歯周病と糖尿病の管理という観点からだけでなく、将来の快適な生活にもつながるでしょう。